初めて消費税の課税事業者になる方を対象に、消費税の計算方法、一般課税(原則課税)と簡易課税制度について、それぞれの概要について説明しております。
ここで対象としているのは、最近、副業で主流となっている事業(せどり、アフィリエイト、ブログ、YouTube等)を行っていて、課税売上が5,000万円を超えていない個人事業主です。
私が税理士の先生から話を聞いて知ったことについて書きました。
はじめに

なんか封筒届いたΣ(っ゚Д゚;)っヒッ



先生っ!税務署からなんか届きました!!



落ち着いてください。
消費税課税事業者届出書(※1)ですね。
ある年度の課税売上が1,000万円を超えると、
その2年後には消費税の課税事業者として
消費税を納めないといけないんです(※2)



消費税って普段から払ってるから
なんかうまいことなってるんじゃないんですか??



払ってますけど、国に納付していませんよね?
それに、はじpayさんも消費税を受け取っていますしね。
まずは消費税の納付までの流れを説明しますね。
※1:消費税課税事業者届出書とは
基準期間における課税売上高が1,000万円超となったとき、速やかに提出が求められている書類
提出しなかったからといって消費税を納めなくて良いわけではありません。
また、同封されている「消費税の課税事業者に該当するかどうかのチェック表」も併せて提出してください。
その他、消費税関係の提出書類は以下引用画像参照してください
引用元:No.6629 消費税の各種届出書|国税庁
※2:課税事業者になる条件
引用元:消費税の仕組み|国税庁
消費税の概要
消費税の納付の流れ


原則的な計算方法(一般課税)
課税期間中の課税売上げに係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額
引用元:消費税のしくみ|国税庁
注1:「課税売上げに係る消費税額」、「課税仕入れ等に係る消費税額」については、それぞれ税率の異なるごとに区分して計算した金額を合計します。
簡単に言うと、売上に伴い受け取った消費税の金額から仕入や経費に伴い支払った消費税の金額を差し引いた金額を納付する消費税の金額として計算する方法。
※:支払った消費税の方が多い場合は還付額
簡易な計算方法(簡易課税制度)
課税期間における課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算します。
課税期間中の課税売上げに係る消費税額-(課税期間中の課税売上げに係る消費税額×みなし仕入率)=消費税額引用元:消費税のしくみ|国税庁
簡単に言うと、売上に伴い受け取った消費税の金額にみなし仕入率(※)を掛けて出た金額を支払った消費税とみなして、それを差し引いた金額を納付する消費税の金額として計算する方法。
※:みなし仕入率とは
営んでいる事業毎にみなし仕入率が定められている。複数の事業を営んでいる場合は原則としてそれぞれの区分毎に計算する。
みなし仕入率は以下の通り
引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm
原則と簡易どちらが良いか



フム(( ˘ω ˘ *))フム
課税事業者にって人が受け取ったのと払った差額を計算して、まとめて納付してくれてるんですね。



そうです。
来年はじpayさんがその課税事業者になるんです。



(´・ω`・ )エッ?
そういうことですか?めんどくさいな??
え?ぼくは原則法と簡易な方法どっちで計算すれば??



どちらにするかはご自身で選ぶことになります。
では、どちらを選択した方が良いか考えていきましょう。
原則法(一般課税)のメリット・デメリット
- 支払っている消費税の額が大きい場合、消費税の還付を受けられる
- 複数の事業を営んでいても事務負担は同じ
- 課税仕入れの集計に係る事務負担が大きい
- 仕入税額控除の適用を受けるため区分経理に対応した帳簿及び区分記載請求書等の保存が求められる(インボイス制度が導入されると適格請求書等の保存が求められる)
簡便法(簡易課税制度)のメリット・デメリット
- 課税仕入れを集計する必要がなく手間がかからない(今後インボイス制度が導入されるとさらに)
- 実際の仕入割合よりもみなし仕入割合の方が高い場合(人件費の割合が高い場合等)、支払うべき消費税の金額が少なくなる
- 実際に支払った消費税が多い場合にも還付を受けることはできない
- みなし仕入割合の方が実際の仕入割合よりも高い場合、支払うべき消費税の金額が大きくなる
- 初回簡易課税を選択した時は2年間変更ができない



なるほど、わからない。
どっちがいいのかわかりません!



そうですよね。
それでは事業別に少し具体的に考えまてみましょう。
事業別の検討
- せどり、転売等の場合
- アフィリエイター、ブロガーの場合
せどり・転売等
せどりや転売をされている方は卸売業or小売業に該当することになるかと思われます(※)
販売先か事業者であれば簡易課税制度では第1種事業が適用され、みなし仕入率は90%となります
販売先が個人であれば簡易課税制度では第2種事業が適用され、みなし仕入率は80%となります
販売先が買取屋のみの場合は第1種事業で良さそうです。
売上の内訳によりますが、利益率が10%~20%を超える場合は簡易課税、下回る場合は原則法を採用すべき。
ただし、これは全ての売上および仕入が課税取引という前提での話であります。海外への輸出を行っている場合や、経費に人件費が多く含まれる場合等では話が変わってきます。特に消費税の還付を目的として、売上の多くをebay等による海外売上が締めている方は原則法を採用しないと還付を受けられないため注意してください。
つまり、売上高が1,000万円として、仕入や経費の合計(※非課税仕入、不課税仕入を除く)が800万円~900万円未満となる場合には簡易課税を採用した方が得になります。
※簡易課税事業区分の判定フローチャート
サービス業の場合(アフィリエイター、ブロガー等)
アフィリエイターやブロガーをされている方はサービス業等に該当すると考えられます(※)
簡易課税制度では第5種事業が適用され、みなし仕入率は50%となります
すごく簡単に言うと、利益率が50%を超える場合は簡易課税、下回る場合は原則法を採用すべき。
つまり、売上高が1,000万円として、経費の合計が500万円未満となる場合には簡易課税を採用した方が得になります。
一般的にアフィリエイト収入には対応する原価は多くないため、それのみで課税事業者になる方は簡易課税制度を選択すべきだと考えられます。ただし、GoogleAdSenseからの収入は消費税のかからない収入であるため、ブロガーやYouTuberのうち、収入の半分以上をAdSenseから得ている方においては、受け取っている消費税が少なく、原則法で計算する方が有利になる可能性が高いため注意が必要です。
※簡易課税事業区分の判定フローチャート



なるほど。完全にわかりました。
ぼくはどっちもあるので、小売の分は原則法で計算して、
アフィリエイト部分は簡易課税で計算します!



だめです。



なんでΣ(っ゚Д゚;)っヒッ



事業毎に計算方法は変えられません。
その他にも注意点があるのでそこも説明していきますね。
簡易課税制度の注意点
- 部分的に採用できない
- 事業年度の開始前までに消費税簡易課税制度選択届出書の提出が必要
- 選択すると最初の2年間は簡易課税制度が固定される
- 消費税の還付は受けられない
- 売上高5,000万円超だと選択不可
部分的に採用できない
簡易課税制度を選択する場合は、全ての事業において簡易課税制度による計算となります。部分的に原則法で計算することは認められていません。
消費税簡易課税制度選択届出書の提出期限
簡易課税制度を選択する場合は「消費税簡易課税制度選択届出書」をその選択したい事業年度が開始する前日までに所轄の税務署に提出する必要があります。
年末付近に今年は利益率めちゃくちゃ高くなったから簡易課税使って節税しよう!なんてことはできません。
2年間の選択固定
簡易課税制度を一度選択すると、最初の2年間は変更できません。そのため簡易課税制度を選択する場合は2年以内に輸出事業を始める予定がないか、設備投資(倉庫や車両)の購入予定がないか等を勘案した上で選択してください。
還付は受けられない
簡易課税制度の計算の仕組み上、納税額がマイナスとなることはありえないので還付を受けることはできません。原則法で計算すると還付になるような事象があるのであれば原則法が有利となります。
売上高5,000万円超だと選択できない
中小事業者の経理事務負担を軽減するのが目的という簡易課税制度の主旨からすると、5,000万円超も売上げてて経理業務ができてないってのはだめということです。
まとめ
一般課税、簡易課税のメリット、デメリットをふまえて、今時点での業績で試算してみましょう。また、その判断をする時には金額的な影響だけでなく、事務負担も考慮にいれつつ検討しましょう。
MoneyForwardクラウド
事務負担については、課税事業者になる規模の取引を行っているのであれば、Excel管理ではなく専用のソフトを利用しましょう。ぼくは家計簿アプリでMoneyForwardを使っていたので、MoneyForwardクラウド確定申告を利用しています。
もともとマネーフォワードに登録しているクレジットカードや銀行口座の取引記録から、自動で仕訳を作成してくれます。その他、楽天市場やYahoo!ショッピング、amazon等の主要ECサイトとも連携できて、購入履歴から自動で仕訳を作成してくれます。


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